表題番号:2009B-303 日付:2010/03/30
研究課題反対側重量合わせ法における力の知覚創出関連領野の解明~fNIRSによる研究~
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 准教授 宝田 雄大
研究成果概要
 主観的な力の大きさの判断(力覚)は求心性経路の神経入力というよりはむしろ、その筋力発揮に注がれる遠心性経路の神経入力により密接に依存し形成されることが知られている(McCloskey, 1978)。
 一方、虚血は力の知覚を顕著に増大させる(Takarada et al., 2006)。すでに短時間の上腕基部への局所的な圧迫は、正常な末梢神経機能を阻害しないことが分かっているので、この知覚の増大は発揮筋力に注がれる中枢性の要因に起因する可能性が高い。また、反対側重量合わせ法で左半球体性感覚野へのrTMSは力覚に何らの変化も与えず、逆に左MIへの磁気刺激による機能低下は、力覚を変化、増加させた(Takarada et al., submitted)。これらの結果は、改めて、McCloskey (1978)の考えを実証するものであった。しかし、rTMS刺激によるMI機能低下は①MI自身の、あるいは➁MIへ出力細胞をもつ領野の神経活動高進のいずれかで補償されなければならない。
 さて本研究の目的は、力覚の評価法の一つ、反対側重量合わせ法実施中の脳機能画像をfNIRSにより取得し、力覚関連領野を明らかにすることである。予備実験でわかったことは以下の点である。
①fNIRS がfMRIに比べ空間分解能が悪く、fMRIのように脳機能部位の詳細な解剖学的位置づけが困難である
②脳深部はもとより、小脳の機能が評価できない
③赤外線照射から受光までの光路長が不明なので、得られたデータは相対的な変化であり、したがって、各チャンネルの直接比較や非連続的な経時データの直接比較が困難である
④fNIRSでの計測されたヘモグロビン変化と脳神経活動の関連性の解明が不十分である
以上のことから、今後の力覚関連領野の解明には、fMRIによる脳機能画像取得を中心に、実験計画を再考する予定である。