表題番号:2009B-299 日付:2014/05/06
研究課題文化的施設の価値評価に関する基礎的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 准教授 小島 隆矢
研究成果概要
 本研究では、いわゆる“箱物行政”批判、事業評価の実施等を背景として岐路に立たされている、博物館型施設(博物館、美術館、動物館、水族館)、劇場、図書館など-これらを文化的施設と呼ぶことにする-に関して、文化・芸術・教育・知的創造・コミュニティ形成など多様な側面において施設が世に提供している価値を評価する方法を開発・提案することを目標としている。本年度の特定課題の範囲内においては、施設種別を公共図書館に絞ってアンケート等の調査分析を行い、評価法提案のための基礎的検討を行う。現在の公共図書館を取り巻く社会的背景として、インターネット発達による活字離れや自治体の財政難に加えて、2008年の図書館法一部改正による図書館評価の努力義務化などが挙げられ、様々な文化的施設の中でも特に価値評価法への要求が高い施設といえる。
 具体的には、図書館の一般利用者(「図書館をよく利用する層」を予備調査により抽出しWeb上で調査を実施、100名)、有識者(本学図書館司書資格関連講義科目担当教員、8名)、両者の中間的な層(本学図書館司書資格関連科目履修者、121名)に対するアンケート調査を実施した。主要な調査内容は、図書館評価に関わる20項目の重視度評価、および定型自由記述形式の設問である。重視度データに対しては因子分析によるニーズ因子抽出と多変量分散分析による3つの回答者層間の比較分析を行った。定型自由記述式設問の結果は記述内容をアフターコーディングし3つの層間で記述内容の出現頻度を比較する統計的検定を行った。それら分析の結果として、履修生・一般利用者には「居心地」「印象・雰囲気」が重要だが,有識者はこれらをあまり重視していないこと、特に「気軽さ(かたくない)」という雰囲気が若い世代を中心に求められていることを示唆する結果を得た。
 これらの成果および有識者へのヒアリング等の検討を経て、次のような仮設を設定した。
・図書館利用度が低い層には,苦手で行かない人と,他の理由(必要がない,時間がない,etc)で行かない人がいる。
・図書館の「堅苦しい」イメージは,「苦手で行かない人」の苦手意識の形成要因、図書館利用の阻害要因となっている。
 今後、上記仮設の検証と、それをふまえた図書館評価法検討のための調査を実施する計画である。