表題番号:2009B-295 日付:2010/11/05
研究課題禁煙支援における再発予防プログラムの開発とその評価
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 教授 竹中 晃二
研究成果概要
本研究においては,成功・失敗も含めて禁煙経験者を対象にして,いったん禁煙した者がどのような状態で,再発(リラプス)に導く一時的喫煙(ラプス),また真の再発を起こしやすいのか,すなわちラプスや再発を生じさせやすいハイリスク状況を調査し,さらにその際に使用した対処方略を探る.また,日常生活におけるストレスがラプス予防や再発を助長することから,プログラムには効果的なストレスマネジメントを組み込み,さらに「吸いたい」という衝動や渇望に対して効果的な対処反応の内容やそれらの効果を調べた上で,包括的な再発予防プログラムを開発して再発予防効果を検証するこことを目的とした.
第一に,本研究では禁煙に伴う離脱症状および喫煙症状の評価を行うため,日本語版の離脱症状および喫煙衝動評価尺度を開発した.尺度に関しては,欧米の文献を参考に作成し,十分な信頼性および妥当性を得た(日本禁煙科学会:審査中).
第二に,ラプスや再発を生じさせやすいハイリスク状況を明らかにするために,1)喫煙者を対象に日常生活の中で喫煙を行っている状況および場面の調査,2)同場面における離脱症状および喫煙衝動の評価を行った.その結果,「気分転換を目的とした喫煙」,「作業や仕事の一区切りとしての喫煙」,「食後」,「口寂しい」という状況や場面において喫煙行動に及んでいることが明らかになった.また,同場面では離脱症状と比較して喫煙衝動の方が強く生じることが示された.
最後に,早稲田大学の倫理委員会から承認を得た上で,3日間の断煙期間においてラプスやリラプスを生じさせやすいハイリスク状況における効果的な対処法略の検討を行った.本研究では,1)ニコチン代替療法の一つであるニコチンパッチ,2)行動的対処方略であり,筋力トレーニングの一つである「アイソメトリック・エクササイズ」とリラックス法の一つである「ボディ・スキャン」を用いて,離脱症状および喫煙衝動の軽減効果について比較検討を行った.その結果,ニコチンパッチのみを使用した禁煙と比較してニコチンパッチに行動的対処方略を組み合わせた禁煙方法が,ラプスを生じさせやすいハイリスク状況において,離脱症状および喫煙衝動を軽減することが示された.
今後は,長期的に禁煙支援を行い,ハイリスク状況において離脱症状および喫煙衝動を軽減することが可能な対処方略の検討を重ね,再発予防プログラムの開発を行う必要がある.