表題番号:2009B-281 日付:2010/11/12
研究課題疑似ランダム刺激による視覚誘発電位を利用した視覚M/P経路特性の計測法の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 准教授 百瀬 桂子
研究成果概要
ヒトの視覚情報が大脳視覚野に至るまでの主な2つの伝達経路(M経路とP経路)について,両経路の機能評価を同時に短時間で行う他覚的方法を確立することを目的として,正弦波縞反転刺激に対する視覚誘発電位(VEP)の測定と分析を行った.正弦波縞はモニタに提示し,縞の輝度をフレーム毎に疑似ランダム2値系列に従って反転させて刺激とした.M/P経路の空間周波数応答特性の違いを踏まえて,正弦波縞反転刺激中に,その空間周波数(0.5~9.0 c/d)を連続的に増加(もしくは減少)させることで,M/P経路を選択的に刺激することを試みた.3名の実験協力者(健常大学生)を対象として,約90秒の刺激に対するVEPを測定し,刺激に用いた疑似ランダム2値系列とVEPとの相互相関関数から,非線形パラメータ(バイナリ核関数)を算出し,空間周波数との関係を調べた.その結果,刺激中の空間周波数の変化に伴って,バイナリ核関数の形状が規則的に変化していくことが確認され,バイナリ核関数の変化から空間周波数の違いを評価できることが示唆された.先行研究では,市松模様刺激によるVEPのバイナリ核関数には,M/P経路の特性に関連する変化が規則的に現れることが示されており,本研究でもそれと同様の傾向を確認できた.しかし,バイナリ核関数の形状やその変化の仕方には個人差が見られた.今後は,変化させる空間周波数の範囲を様々に設定して,バイナリ核関数におけるM/P経路関連応答の現れ方をより精査して適切な刺激条件を調べる必要がある.また,個人差によらずM/P経路の機能評価を行える方法を確立することも次の課題である.