表題番号:2009B-278 日付:2010/04/08
研究課題カハールの介在細胞と類似細胞の形態学的解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 教授 小室 輝昌
研究成果概要
 カハールの介在細胞(interstitial cells of Cajal:ICC)は消化管運動のペースメーカーあるいは神経信号の伝達役として広く知られるようになったが、ICC を識別、同定しようとする研究の過程で、異種類似細胞の平滑筋運動への関与も示唆されるようになり、 (1)消化管運動調節機構を包括的に考察する上では、神経、筋、ICC に加えICC 類似細胞も含めた細胞要素の相互の関係を三次元的に捉えることが重要となって来ている。また、(2)ICC 自体についても、各サブタイプの個々の細胞学的特徴にとどまらず、ネットワークとしての広がり、相互の連続性の有無などの検索が、調節機能の考察に必要となって来ている。

 ところで、ICC の同定にはc-Kit 受容体蛋白の免疫組織化学が特異的染色法として用いられているが、Kit 陰性ICC類似細胞の描出には、信頼性の高い確実な手法は無く、本研究においても、種々模索する段階にあった。しかしながら、本年、競合する研究者によりPDGFR (platelet-deribed growth factor receptor) の免疫染色を用いたマウス消化管でのKit 陰性ICC類似細胞が観察され、ICC とは異なる細胞性ネットワークの存在することが証明された。これに則り、成果の総合的検討の必要上、手元データとしてICC 観察の蓄積のあるモルモットでの同手法を試みたが、動物種差によるものかモルモットでの描出は困難であった。

 そこで、以後、(2)の観点からの課題に絞り、モルモット結腸における ICC の立体的構築について検索した。
 その結果、結腸筋叢間神経叢のICC-MPは、これまで報告してきた消化管部位に照らしてみると、胃幽門部とは異なる一方、小腸のICC-MPと同様、神経節周辺に籠状構造を作ることが明らかとなった。また、小腸に比して良く発達した輪走筋層内の ICC-CM は連続したネットワークを構成しており、ICC-MP とも組織層を越えて連絡していることが明らかとなった。