表題番号:2009B-271 日付:2010/04/09
研究課題ポスト京都議定書に向けた途上国の住民主体による森林の取り扱いに関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 教授 天野 正博
研究成果概要
地球温暖化対策として途上国における森林減少の抑制、植林の重要性が大きくクローズアップされ、我が国の鳩山イニシアティブを始め、先進国が巨額の資金を投入し、熱帯林のCO2吸収能力の維持増進に努めている。一方で、途上国では10億人以上の人達が森林との関わりを持ちながら生活しており、森林減少・劣化も彼らの日常活動の中で生じている。そこでタイ、ベトナム、インドネシア、ラオスを対象に、森林破壊の主役であった住民が森林減少・劣化の抑制あるいは森林再生を実施する主体に転じる方策を調べ解決策を提案した。
(1)タイにおける森林再生へのインセンティブの分析
ユーカリ林の植栽が盛んな東北タイの農民に対し、どのようなインセンティブが植林推進に有効に働くかを調査し、森林再生の政策提言につなげた。
(2)ベトナムでの植林事業への住民のかかわり方
 社会主義政権であることからトップダウン的な森林管理をし、森林からの利潤が国に帰属するため、住民が植林に対しインセンティブを持っていない。こうした国で住民をどのように組織化し植林活動に持続性を持たせるかを、模擬的な植林事業を想定しながら住民の意識がどのようなインセンティブを必要としているのかを住民ワークショップを通じて明らかにした。
(3)ラオスでの焼き畑防止策の提案
 ラオスは東南アジアでもっとも森林減少が進んでおり、その原因は焼き畑にある。そこで、北部山岳地を対象に焼き畑主体の移動耕作から定着農業に転換するための施策を複数の集落で実施中である。結果は、この研究をベースに今年度から始まる科研費の課題で明らかにする。
(4)インドネシア湿地林地域での低炭素農業の促進
 温室効果ガス排出量が世界有数のカリマンタンでは、湿地林地域の乾燥化に伴うCO2排出が大きな問題となっている。そこで、農耕地開発や森林伐採のために開設される水路による湿地林地域の乾燥化を防ぐような社会経済構造の提案を行った。