表題番号:2009B-267 日付:2010/04/19
研究課題産業遺産をめぐる歴史と記憶についての知識社会学的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学総合学術院 准教授 周藤 真也
研究成果概要
 産業遺産をめぐる歴史と記憶の現状を確認するべく、前年度に引き続き北海道や炭鉱をテーマとして歴史博物館・郷土博物館を訪問し、展示の状況について調査するとともに、資料の収集を行った。
 北海道をめぐる歴史と記憶についての現状調査は、対象を炭鉱から開拓やニシン漁や林業などの旧産業の記憶に広げて行った。9月には現地を視察し、北海道各地の産業遺産の状況について確認するとともに、歴史博物館・郷土博物館の展示がどのように構成されているのかを確認することができた。これらの取り組みによって、北海道の歴史や記憶についていくつかの興味深い主題を発見することができ、現在これらの主題を中心に論文の執筆など研究のとりまとめに入っているところである。
 炭鉱をテーマとした歴史と記憶についての現状調査は、前年度に石狩炭田(北海道)、常磐炭田(福島県・茨城県)、筑豊炭田(福岡県)等の一部について、炭鉱関係の展示のある歴史博物館・郷土資料館の訪問を行っていたが、今年度はさらに、留萌炭田・天北炭田(北海道)、宇部炭田・美祢炭田(山口県)、北松炭田・西彼杵炭田(長崎県)、三池炭田(福岡県・熊本県)などにも範域を広げ、全国的な調査に展開した。6月、11月、1月、3月に各地区の未訪問の歴史博物館・郷土資料館の訪問を行い、この成果により、現存するほぼすべての炭鉱関係の歴史博物館・郷土博物館を訪問することができ、日本国内の炭鉱をめぐる歴史と記憶の現状について、歴史や記憶の保存についての取り組みや、産業遺産化や観光化の現状、「地域おこし」やまちづくりへ活かす試みなどを把握することができた。
 今後は、これまで行ってきた研究の成果を取りまとめる、歴史や記憶の保存に関わっている人びとに対するインタビュー調査への展開に向けて準備するとともに、国際的な比較研究に繋げていきたいと考えている。現に3月には台湾を訪問し、台湾における金鉱や炭鉱の遺構の観光化の現状について視察してきており、国際的な比較研究を進める準備をはじめている。