表題番号:2009B-232 日付:2010/04/02
研究課題コンテンツ構造を考慮した多様な権利管理のための権利記述と制御方式に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 亀山 渉
研究成果概要
今日のディジタルコンテンツ流通環境では、一般利用者を含む誰もが、コンテンツの制作・発信・共有・二次利用等を行えるようになってきた。これに伴い、安心安全にコンテンツを利活用して流通させるため、権利許諾処理条件を明確にして、円滑なコンテンツ流通を促す検討が進められている。しかしながら、コンテンツの二次利用に焦点を当てると、映像コンテンツや3Dコンテンツ等では様々な視聴効果等の制御が可能であることから、コンテンツ構造を考慮しなければ矛盾した権利記述や無効な権利記述になる可能性がある。例えば、ディジタルコンテンツの視聴及び改編・改変操作は、コンテンツのデータそのものに対する行為とコンテンツの構造に対する行為とに分けられることから、それぞれに対する権利記述が必要となる。また、このような権利許諾管理を実現することで、DRMにおいて曖昧であった原著作者の権利の所在と二次著作者の権利の所在を明確にした権利継承も実現できる可能性がある。例えば、上映された映画をDVD販売する際にはチャプタ情報が付けられているが、これは元の映画には付随していなかったコンテンツの構造情報であり、これを付加したことでスキップなどの視聴操作が可能となる。その権利が映画の著作権者によって当初から意図されていたものであるかは一般的には明らかではないが、コンテンツ構造情報に対する新しい権利として分離記述して許諾管理をすれば、権利の所在を明確化することが可能となる。

以上から、本研究では、コンテンツ構造に着目し、多種多様な視聴及び改編・改変行為に対して、明確でかつ無矛盾な権利許諾管理手法及び二次コンテンツ作成に伴う権利継承処理手法を明らかにすることを主眼として、必要な技術の確立とその検証を行うことを目的とした。具体的には、(1) 「データ」「構造」「制御」「表示」の4機能からなるコンテンツモデルの確立、(2) 多種多様な利用行為と上記コンテンツモデルの4機能の関係を利用した許諾管理とコンテンツ制作のための編集履歴管理を実現する権利管理方式の明確化、(3) 上記コンテンツモデルの4機能に対する許諾条件を矛盾なく記述するための必要語彙と記述表現形式の明確化、について検討を行った。そして、これらに関する2009年度の研究成果は、下記の2つの学会発表によって公表した。

今後の課題としては、プロトタイプシステムの作成を通して、機能面と実用性の観点から評価を行うことが残されている。