表題番号:2009B-229 日付:2010/04/01
研究課題逆電流耐性を有する傾斜機能型ハイブリッド電解質膜の開発研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 鷲尾 方一
研究成果概要
 これまで我々は、電子線グラフト重合法により固体高分子形燃料電池用のカチオン交換膜を開発してきた。さらに作製したカチオン交換膜を微粒子化し市販のNafion® 分散液と混合してハイブリッド電解質膜を成形することで,発電性能の向上が得られることが分かった。しかしながら,得られたハイブリッド膜は耐酸化性に課題を残していた。そこで,本研究ではカチオン交換膜にアニオン交換樹脂を少量添加することによって,ヒドロキシラジカルによる酸化劣化の抑制を検討した。開発したカチオン/アニオン交換基を有するハイブリッド電解質膜の基礎物性と,アニオン交換樹脂を含有させたことによる発電性能への影響を評価した。
 具体的には、アニオン交換樹脂アンバーライト(オルガノ株式会社製)を粉砕し,Nafion®分散液に加えた混合液を用意した。得られた混合液を超音波振動処理することで充分に撹拌させたあと,溶液をシャーレに移し,室温乾燥および熱処理(120 ℃,10 min,真空)をすることでハイブリッド膜(NA)を作製した。添加粒子の重量割合が1, 5 wt%であるハイブリット膜をそれぞれNA-1%,NA-5% とし,Nafion®分散液のみで作製したNafion-cast 膜を比較対象として用いた。作製したハイブリッド膜の基礎物性,および発電性能を測定した。発電のための膜・電極接合体(MEA)は,0.1 mlのNafion® 分散液を塗布・乾燥させてバインダー層を形成させたPt担持カーボン電極に,電解質膜を挟み熱プレス(110 ℃,8 MPa, 3 min)することで作製した。作製したMEAをJARI標準燃料電池発電セルに組み込み,セル温度60 ℃で発電試験を行った。使用した水素および酸素ガスの流量は50 ml/minであり,水素ガスは室温加湿した(相対湿度: 16%)。リニアスイープボルタンメトリ法によりI-V特性を評価し,四極交流インピーダンス法により電池の内部抵抗を測定した。
 その結果、従来のカチオン交換膜の性能と発電性能においてほぼ同等である膜が得られる事を確認した。またアニオン交換樹脂を5%添加した膜においてはOCVの工場も見られ、今後逆電流耐性のある膜の開発に向けた基礎的なデータを得る事ができた。