表題番号:2009B-211 日付:2010/03/05
研究課題多点同時蛍光相関分析法による神経細胞樹状突起内の分子動態の解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 井上 貴文
研究成果概要
通常の二光子励起顕微鏡で使われるガルバノミラーによるXY両軸のスキャンではなく、直交する2つのAODデバイスによるXYスキャンを用いることにより、従来型では不可能であったランダムスキャンを可能とし、非常に低侵襲で高速な(数10 kHz以上)観測を可能とする新型二光子励起顕微鏡を開発した。本年度はフェムト秒レーザーの波形調節機構(プレチャープ光学系、AOMデバイスの制御系)、レーザー導入系、AODデバイスの制御系、及び光子計測モードで動作させる光電子増倍管の制御系を完成した。また、高速に焦点面を変化させるためのピエゾ素子を用いた焦点可変装置を導入した。AODによるスキャン方式では2次元空間上の複数の点から測定できるので、神経細胞の多数のスパインおよび樹状突起中の情報を収集できる。またランダムスキャン方式により、必要最小限のスポットにのみ励起光を照射するので、従来型のXYスキャンあるいはラインスキャンの場合に大きな問題であった細胞のダメージが大きく軽減される。また、記録部は光電子増倍管を光子計数モードで動作させるので熱ノイズをキャンセルすることができ、低ノイズでの記録が期待される。今後は本装置に蛍光相関分光法(FCS)をリアルタイムで適用するソフトウェアを実装し、細胞質でのタンパク分子蛍光分子の挙動を測定することによりシグナル分子の挙動を精密に測定することを試みる。