表題番号:2009B-205 日付:2012/10/30
研究課題コラーゲン様三重螺旋型ペプチドの薬物利用への可能性
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 小出 隆規
研究成果概要
本研究は、化学合成したコラーゲン様3重らせんペプチドの薬物への応用の可能性を探ることを目的とした萌芽的研究である。
 コラーゲン様3重らせんペプチドは、コラゲナーゼ以外のプロテアーゼによる消化に抵抗する。また、われわれが行ったラットでのコラーゲン様3重らせんペプチドの体内動態調査では、低い組織移行性によって長時間血液とともに循環するという興味深い予備的結果が得られていた。そこで本研究では、この血液滞留性に着目し、1)血管造影剤、2)抗血小板薬、への利用可能性について検討した。

1)血管造影剤への応用
 典型的なコラーゲン様ペプチドである(Pro-Hyp-Gly)10のアミノ末端に、核磁気共鳴イメージング(MRI)増感剤としてもちいられるGd(3+)-DOTA錯体を導入することを試みた。しかしながら、ペプチドのDOTA化の最適な条件を実用的な範囲で定めることが困難であった。そこで、われわれはGd(3+)-DOTA錯体によるMRIイメージングの代わりに、in vivo蛍光イメージングを目指した蛍光化コラーゲン様ペプチドを作成することとした。現在までに、アミノ末端にフルオレセインを結合した(Pro-Hyp-Gly)10の合成を終えている。今後、ラットをもちいたin vivoアッセイにこれを用いる。

2)抗血小板薬への応用
 ここでは、コラーゲン3重らせん構造を有する血小板作用薬について検討を行った。われわれは血小板上のコラーゲン受容体であるglycoprotein VI(GPVI)をターゲットとしてこれに結合するコラーゲン様ペプチドを探索した。その結果、GPVIに結合するコラーゲン様ペプチドを取得した。このペプチドは、in vitroにおいて、血小板凝集を促進するアゴニストであった。しかしながら、マウスを用いた経静脈投与では、血栓形成などGPVIのアゴニスト活性にもとづく顕著な生理作用は観察されなかった。