表題番号:2009B-203 日付:2010/07/01
研究課題自己複製に向けた高分子ゲルの接着制御に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 橋本 周司
(連携研究者) 理工学術院 助教 前田 真吾
(連携研究者) 理工学術院 客員准教授(専任扱い) 原 雄介
研究成果概要
近年、高い生体適合性や刺激応答性を有する機能性ゲルの研究が盛んに行われている。しかしながら、異なった機能を持つゲル同士を物理的に自在に組み合わせる(接着させる)ことによって、多機能化を図る試みはあまり行われていない。我々はこれまで、リニアポリマーによるゲルの表面改質手法を用いることによって、ゲル同士の接着制御に関する検討を行ってきたが、高強度Semi-IPNゲル同士を無機微粒子による表面改質手法を用いることで、接着制御可能なことを新たに見出した。実験に用いたSemi-IPNゲルは、MAPTACを用いてファーストネットワークをUV照射により調整した後に、AAmモノマーを含浸させてセカンドネットワークを調整した。Semi-IPNゲルのファーストネットワークはMAPTACで構成されているため、表面電荷はプラスに帯電している。そのため、Semi-IPNゲル同士の接着は、静電反発効果により困難である。このような静電反発効果を回避するため、負に帯電したシリカ微粒子をゲル表面に塗布することでゲル同士を強固に接着させる手法を見出した。この接着手法の利点は、シリカ微粒子を塗布した部分のみ、接着性の改質が行える点にある【接着面の選択性】。また、ゲル表面のみを改質するため、ゲルが持つ機能を変化させることなく、物理的な接着が可能である【機能性の維持】。SEM画像より、ゲル網目上にシリカ微粒子がプレート状に積層する形で、数多く並んでいることが確認できた。これより、マイナスに帯電したシリカ微粒子によるゲル同士の接着は、シリカ微粒子が単層ではなく、多層化することで接着に寄与していることが明らかとなった。ゲルとシリカ微粒子の相互作用、また多層構造を形成しているシリカ微粒子同士の相互作用が本接着手法に大きく寄与していることが考えられる。