表題番号:2009B-197 日付:2010/03/02
研究課題大気中多環芳香族炭化水素の有害酸化反応生成物の探索と動態解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 名古屋 俊士
研究成果概要
これまで一般的な大気中発がん性物質とされてきた多環芳香族炭化水素(PAHs)に加え,PAHsの大気中での移流・拡散過程において二次的に生成しうるPAHs酸化物に着目し,その動態解析のための基礎研究を行った。大気中二次生成したこれら含酸素PAHsの一部は,近年アレルギー反応増強作用など有害性が懸念されはじめてきた新規有害物質であり,今後その学術的重要性は大きい。
まず,GC/MSによる定性分析により対象化合物の選定および前処理・分析法を確立した。さらに,これら有害含酸素PAHsは,気相のPAHsの酸化による生成が支配的であることから,気相PAHsの捕集・分析法の開発も行った。本研究で開発した気相PAHsの捕集法は,従来までの高流量用の大型ではなく,XAD-2樹脂を用いて新規開発した低流量(20L/min)用小型カートリッジを使用することで,高い汎用性および迅速前処理を可能とする極めて有用な新規法である。その後,2008~2009年度にかけて採取した東京都都市大気エアロゾルに含まれる有害含酸素PAHsを分析し,東京都心部での動態解析を行った。その結果,これら新規有害物質は,ディーゼル車からの直接的な排出とともに,一部はPAHsの大気中酸化,すなわち大気中二次生成の影響によっても大きな寄与で生成していることを明らかにした。
以上の成果をもとに、2009年度における国内外の学会計3回の発表,また,以前の成果と合わせたものを含めて3報の学術論文執筆・投稿した。なお,それらは審査中の段階である。