表題番号:2009B-194 日付:2010/04/01
研究課題Ⅳ族系半導体の酸化膜形成機構に関する計算科学的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 渡邉 孝信
研究成果概要
研究代表者が発見したSi熱酸化理論を発展させ、Ge、SiGe、SiCなど、工学上特に重要なIV族半導体の酸化膜界面の統一的理解を最終目標に掲げている。本特定課題研究ではGeO2/Ge界面の大規模モデリングを実施するとともに、ナノスケール半導体の酸化膜が半導体中の電子やフォノンの伝導機構に与える影響を調査した。

・GeO2/Ge界面の大規模モデリング
前年度に開発したGe,O混在系用原子間相互作用モデルを用いて、代表的な3種類の結晶面のGe基板、すなわち、Ge(100)、Ge(110)、Ge(111)上の酸化膜構造のシミュレーションを実施した。その結果、酸化膜部のストレスならびに界面欠陥密度の基板面方位依存性がSi系と定性的に同様であること、ただしそれらの値は全体的にSi系よりも小さいことが判明した。詳しい解析の結果、Ge系の方がGeO4正四面体構造の結合角歪が小さい事、Ge-O-Ge架橋酸素構造の平衡角が小さい事が、良好な界面を形成できる原因と判明した。

・ナノスケール半導体の電子伝導機構
酸化誘起歪を印加したナノワイヤトランジスタを独自に作製し、電流駆動能力の結晶方位依存性を調査した結果、p型では(110)面上で、n型では(100)面上で電流駆動能力が向上することがわかった。さらに、ナノワイヤ幅依存性についても調査したところ、バルクSi中のフォノンの平均自由行程(300nm)を下回ると、フォノン散乱が抑制されることが実証された。

・ナノスケール半導体中のフォノン伝導機構
SiO2膜で挟まれたシート状Si結晶層中の熱伝導シミュレーションを実施した。その結果、Si層が薄くなるほど熱拡散速度が低下すること、SiO2層の厚さは熱拡散速度にほとんど影響しないこと、が判明した。このサイズ依存性の原因として、界面におけるフォノン散乱の影響と、酸化誘起歪によるフォノン分散関係の変調の2つが考えられる。原因を詳しく明らかにするため、フォノンモード解析プログラムを開発した。次年度より、このプログラムを用いて、ナノ構造体中で発生したフォノンの動的挙動を明らかにしていく。