表題番号:2009B-184 日付:2010/02/19
研究課題精密CFRP構造体のミクロンオーダー寸法安定性の確立
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 助手 荒尾 与史彦
研究成果概要
本研究では,軽量かつ高精度のCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)ミラーを開発することを目的としてる。CFRPを用いた精密設計手法を確立することで,宇宙望遠鏡の性能のブレークスルーをはかることができ,天文物理学の発展に大きく寄与することができる。開発を行うためには,CFRPの長期寸法保証を行う必要がある。そこで,中央面に対称に積層されたCFRP積層板を成形し,その形状保持機能について調査を行った。
 これまで,対称積層板は形状変化を引き起こさないとされていたが,本研究において,高精度に形状を測定した結果,数十~数百ミクロンで,面外変形を生じることが明らかとなった。この変形メカニズムを解明するために,変形原因を仮定し,実験結果と比較した。その結果,積層する際の積層誤差,および各層内での繊維の偏りによって,吸湿や熱変化により,面外変形を生じることが判明した。解析では層の積層誤差のランダム性を考慮して,モンテカルロ法にて変形解析を行った。その結果,層の誤差としては,標準偏差で約0.2°程度存在することが明らかとなった。この積層誤差を踏まえて背面構造等を決定する必要がある。
 以上の研究を踏まえて,CFRPミラーを試作した。CFRPの表面は,磨いても表面の凹凸を除去できないため,CFRPの表面に薄い樹脂層をもうけ,バフ研磨した後,アルミニウムを蒸着させることで,CFRPのミラー面を創製した。試作したミラーをレーザー干渉計で変形を測定した結果,変形量はたかだか,30nmRMSであることを確認した。この値はミラーサイズによって変化する値であるが,10cm×10cm角のミラーではサブミクロンレベルでの精密設計を行うことができた。