表題番号:2009B-158 日付:2010/03/19
研究課題コンパイラ解析情報と実機実行情報を利用したマルチコアシミュレーション高速化の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 木村 啓二
研究成果概要
計算機アーキテクチャの研究では、様々な構成のシステム評価を行うため、ソフトウェアによるアーキテクチャシミュレーションが大きな役割を果たしている。しかしながら、ソフトウェアシミュレータはプログラムの実行に実機の数千倍の時間がかかる。このような膨大な評価時間は今後のメニーコアの研究・開発の大きな妨げになる。本研究では、このような問題を克服するための、マルチコア・メニーコアのソフトウェアシミュレーション高速化手法の研究を行う。
特に並列アーキテクチャ研究のためのシミュレーション高速化の研究に関しては、これまでミュレーションによる実験対象となる仮想のマルチコアやマルチプロセッサのコアを、シミュレータを実行する実際のマルチプロセッサのコアに割り当てるという方法が提案されてきたが、実機上の並列処理オーバーヘッドが大きく、実用的なシステムはこれまで実現されていない。
本研究の特徴は、マルチコア・メニーコアのソフトウェアシミュレーションの高速化に、ループ構造や並列化情報などの並列化コンパイラによる解析情報と、評価対象アプリケーションの実機での実行情報を利用することである。これらの情報を利用し、詳細にシミュレーションする必要がある箇所とそうでない箇所を特定する。従来のソフトウェアシミュレーション高速化手法では利用されてこなかったこれらの付加的な情報を利用することで、精度の高い性能値を最小の実行コストで得ることができる。
本年度は、本高速化手法の基本的な適用可能性を検討するための予備実験を行った。具体的には、二種類のマルチコアアーキテクチャのコア数を32コアまで変化させ、ベンチマークプログラムのメインループの回転数を変化させ本研究による性能値推定手法により本来のループ回転数における性能値を再現できるか調査した。ベンチマークプログラムとしてSPEC95ベンチマークのtomcatvとswim、および音声圧縮で標準的に使われているAACエンコーディングプログラムを用いた。評価の結果、いずれのアーキテクチャ、コア数、ベンチマークプログラムの組み合わせにおいても、わずか数回転分の性能値から本来の数百回転分の性能値を高々2%程度の誤差で予測することができた。
今後は適用アプリケーションの拡大ならびにシステムの自動化を行う予定である。