表題番号:2009B-155 日付:2010/04/10
研究課題幼児の豊かな知性・感性を育む音環境づくり
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 及川 靖広
(連携研究者) 大学院国際情報通信研究科 教授 山崎芳男
研究成果概要
 就学前の幼児期において生活してゆく環境は非常に重要であり、その時期にふれあった人やモノなどの環境全体が後の成長に与える影響は極めて大きい。中でも音環境は、人々のコミュニケーション活動において重要な役割を果たしている。会話のような言語的コミュニケーションのみならず、「話のはずむ空間」「落ち着ける居場所」といった“場の雰囲気”や、サイン音・環境音等の外的刺激によるあらゆる行動の“動機づけ”など、音環境は人やモノを含めたコミュニケーション活動全般に深く影響していると考えられる。
 本研究では、幼児の学習の場である幼稚園施設を対象とし、視覚的側面に比べてその重要性に差がつけ難く多面的な検討が必要な“音環境”に着目する。多彩な音、言語や音楽、建築学的な“音の響き”など、音響的側面における“他とのふれあい”を意識した環境づくりのための音環境観測手法について検討し、幼児の観点に立った音環境デザインの提案と実践を目指す。
具体的には
1) 幼児の観点に立った音環境観測手法の検討
・ コミュニケーション活動の観測技術の開発
・ 幼稚園における学習活動の観測
2) 幼児の観点に立った音環境デザインの提案と実践
・備品を用いた音空間づくりの実践
を行った。音環境観察手法の検討としては、カメラ映像にマイクロホンアレーで収録した音情報をスーパーインポーズしどの場所からどのような音が発生しているかを観測可能な音響TVの開発や高速度カメラを用いた音場観察手法の検討を行った。特に音響TVに関してはそれを用いた幼稚園での活動の観測を行い、活動形態の違いによる音の発生の様子の違いを観測した。幼児の観点に立った音環境デザインの提案と実践としては、園舎室内床に絨毯を敷き込み、環境の変化前後の音響性能測定及び活動時の音環境の観測を行った。幼児にとっては新たな環境とかかわることであそびの活動が変化し、 創造的な活動の展開が促された。音響性能としての変化は残響時間の差として現れる一方、実際の活動時の音環境は一義的に変化せず、環境の変化による影響が活動形態によって異なる結果となった。