表題番号:2009B-154 日付:2011/05/24
研究課題流体力学の数学:マクロからメソへ
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 柴田 良弘
研究成果概要
ナヴィエ・ストークス方程式の自由境界問題の時間局所解の存在証明をテーマに研究を行った。
1.J.Pruess, ハレー大学教授を招聘し、Maximal Lp-regularity, Quasilinear Parabolic Systems, and Applicataions to Two-Phase probolems という表題で、secotorial operatorと R-sectorial operatorの定義と基本性質、作用素値のH-infinity calculusによる最大正則性原理の導出、そして線形安定性理論に関するJ.Pruess氏自身の抽象的理論の紹介と表面張力を有する2相問題の定常解の安定性への応用に関するレビューを受けた。詳細については柴田研究室ホームページhttp://www.fluid.sci.waseda.ac.jp/shibata/index.html
を参照できる。
2. 混相流の研究で用いられる基礎方程式とその数値解法をレビューし,空気中と水中それぞれにおける高速水噴流に関して予備研究を行った.また分子動力学を用いた表面現象に関する研究例をレビューし,混相流問題における分子動力学の有効性を検討した.
3. 混相流などの現象を記述する、ナヴィエ・ストークス方程式の自由境界問題を扱う数学理論の基礎として、その線形化問題に対する最大正則性原理を導く方法を確立した。これは上記1のJ.Pruess氏の方法とは本質的に異なる新しい方法で, 時間と空間に別のノルムを使うことのできる非常にシャープな結果を導ける。まず、全空間と半空間のモデル問題については、レゾルベント評価と最大正則性原理を同時に導出することができる, 作用素のR-boundedという概念に基づく方法を確立した。この結果を湾曲半空間の場合に摂動理論を用いて拡張し、さらに湾曲半空間の結果を局所化問題に適用し、剰余項を問題の放物性を利用することで処理することにより、一般領域での最大正則性原理を導く方法を確立した。
4. 上記の方法を適用し、有界領域での1相問題での自由境界問題の時間局所解と時間大域解の存在を求めた。
5. 3の方法を適用し、熱弾性体方程式に対する最大正則性原理を示した。熱弾性体方程式は波動方程式と熱方程式の混合方程式であるが、全体として放物型方程式となることを発見した。このことから最大正則性原理を示せた。これは先駆的な結果であり、この方面の
研究にまったく新しい局面を切り開くにいたった。