表題番号:2009B-151 日付:2010/04/07
研究課題自律神経組織体による心筋細胞組織体の拍動機能制御システムの構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 武田 直也
研究成果概要
1. 研究目的
神経-心筋の共培養や生体情報伝達解析ならびに細胞機能制御のプラットフォームとなる培養システムの構築を目指し、その基盤技術としての、神経系細胞(初代神経細胞、神経モデル細胞、グリア細胞)の単一細胞を精緻に配置して、神経細胞ネットワークを作製する培養システムの構築に注力した。この神経系細胞の単一細胞ネットワーク構築には、ナノスケールの半導体加工に汎用されている高分子の電子線レジストを用いたリソグラフィー技術を応用した。ナノサイズのパターンを描画した電子線レジストは、半導体加工ではマスク材として用いられた後に除去されるが、本研究ではこのナノ描画高分子表面を除去することなく直接に細胞のパターニングが可能な培養基板へと応用した。
2. 実験
電子線照射部位のみに最小解像度20 nmで精緻なパターンを作製可能なpoly[1-chloro-(methyl acrylate)-co-(1-methylstylene)]を主体とした高分子ポジ型レジストをガラス表面に400 nm厚で塗布し、電子線照射および現像処理により一辺20~50 μmの正方形パターンをアレイ状に作製した。未照射部位はpluronicF108で修飾をして、細胞の接着を妨げた。これにより、アレイ状の細胞接着領域に対して、神経細胞、アストロサイト、ならびに神経モデル細胞であるPC12細胞が単一細胞レベルで接着が可能とした。更に、100 nm幅の微細なライン状のパターンに沿って、ナノサイズである神経突起の伸長方向を精確に誘導することを試みた。
3. 結果と考察
PluronicF108の表面修飾は有効に機能し、高いコントラストをもって、電子線で描画したパターン上のみへ細胞が接着した。一辺20 μmの正方形の細胞接着領域をアレイ状に並べたパターンでは、アストロサイトとPC12細胞を用いた場合に、各パターンに単一の細胞を配置できた。また、蛍光染色を用いた解析では、正方形パターンの縁の各辺に沿ってアストロサイト細胞のアクチンフィラメントの集積がみられ、細胞が細胞接着領域のパターンを正確に認識して接着斑を形成していることが強く示唆された。さらに、アストロサイトやPC12細胞の細胞突起構造を、100 nm幅の微細なラインパターンに沿って精確に伸展させることも達成した。胎仔ラット由来の初代神経細胞についても、単一細胞レベルでのアストロサイトとの共培養を実現した。これらの結果から、本単一細胞培養システムは、パターン形状の適切なデザインにより、任意の形状での精緻な細胞ネットワーク形成や神経回路形成への応用が可能であることを示した。