表題番号:2009B-149 日付:2010/04/05
研究課題土素材を用いた次世代建築モデルと地域の資源・技術を活用した展開プログラムの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 輿石 直幸
研究成果概要
 筆者らは、環境負荷の少ない伝統的な小舞土壁構法の優位性に着目し、左官職人の経験と勘によって継承されてきた伝統技術を、今日の建築材料学的手法によって解明することで、土壁が再び戸建住宅等の小規模建築に広く利用されることを目指している。本課題では別途、焼成用粘土、土壌、地盤、さらには建設残土や浚渫土砂などといった未利用資源も含めて「土素材」と位置付け、これらを高度に利用した次世代建築モデルを提案することを目的としている。
 本年度は、首都圏の戸建住宅建築プロジェクト(2010年春に着工予定)において、その壁体を建設地近郊で入手可能な土素材を焼成せずに固めたブロックを積み上げて構築することになり、その材料および調合、さらには施工時の生産性を考慮した製造方法について実験的検討を行った。なお、この壁体は、室内側に厚さ40cmの構造体、中空層を設けて、屋外側に雨水等の浸入を防ぐ厚さ10cmの外装壁から成る二重壁の組積構造になっている。
 以下に主な検討結果を述べる。
1)湿式成形を想定した検討
 湿潤状態の土を型枠に流し込む湿式成形は、日干しレンガの作製方法を参考にした。本実験では混合物の種類と量および作製方法等の検討を行った。主に乾燥収縮を低減するため、壁土、版築およびたたきに使用される藁ならびに石灰系結合材を混合物することとし、実験により、圧縮強度の向上に効果的な配合量を求めた。
2)乾式成形を想定した検討
 少量の水を加えた土を人力またはプレス機を使用して締固める乾式成形は、版築およびたたきの作製方法を参考にした。本実験では、混合物として石灰やマグネシウム等の無機系結合材を使用し、調合、成形時の含水比および加圧力などの諸条件を最適化するための検討を行った。成形時の含水比が大きい場合は、充填密度に対する加圧力の影響は小さく、比較的小さな加圧力で成形可能であった。一方、含水比が小さい場合は、加圧力が大きい場合ほど充填密度は増大することを確認し、今回の建設現場で実施可能な加圧力から成形ブロックの圧縮強度を推定した。