表題番号:2009B-143 日付:2010/04/10
研究課題最適支持剛性を有するヘリングボーン動圧気体軸受システムの構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 富岡 淳
研究成果概要
一般に,動圧軸受は高速回転域において自励振動が発生して安定性に乏しいため,超高速回転の実現には外部支持要素の設計が重要であると思われる.しかし,軸受を外部要素によって支持する安定化法は実用レベルで多く利用されているものの,理論的および実験的な詳細な検討は少なく十分でない.そこで,外部弾性・減衰要素で支持されたときのヘリングボーン動圧気体軸受の高速安定性について,理論的,実験的に検討し,さらなる超高速回転体の開発に対する設計指針を得る必要があるものと考えられる.
そこで本研究では,外部弾性・減衰要素に粘弾性レオロジーモデルを適用し,その弾性係数および減衰係数をさまざまに変化させ,最適支持剛性を有するヘリングボーン動圧気体軸受システムの構築を目的とした.その結果,以下の結論を得た.
(1)軸受を弾性要素のみで支持し,減衰要素を付加させなかった場合,弾性係数が小さくなるほど安定限界が低くなり,軸受を剛体支持したよりも安定性が向上することはない.
(2)外部要素の弾性係数が潤滑の剛性に対して大きくなると,外部弾性・減衰要素による軸受支持の効果がほとんど見られない.
(3)外部要素と潤滑膜の剛性が比較的近い値になると,安定限界が複雑に変化して外部要素の影響が大きく現れる.このとき,減衰比を0.2から0.6程度に設計することによって,ヘリングボーン動圧気体軸受の運転安定領域を大幅に広げることができ,安定限界を剛体支持された場合に比べて3倍以上にまで高めることができる.
(4)外部要素の弾性係数の値が潤滑膜の剛性に対して小さくなると,剛体支持の場合に比べて安定限界を2倍程度まで向上させることが可能である.このとき,減衰比が大きくなるほど安定限界値が大きくなる傾向がある.
(5)ヘリングボーン動圧気体軸受を外部要素で支持した場合,一度自励振動が発生しても,さらに高速運転することで自励振動が消滅し,安定運転できる軸受支持条件が存在する.