表題番号:2009B-138 日付:2010/03/31
研究課題最終処分場リスク低減促進をめざした不均質場における浸透流の実験的解明とモデル化
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 香村 一夫
研究成果概要
1.研究概要
 最終処分場における廃棄物の安定化の判断およびその促進において、微生物の代謝ならびに溶脱着等に関与する降雨由来の浸透流の挙動解明は重要である。しかし、多様なものが混在する廃棄物層の特性から、この浸透流は不均質な媒体中を流れる不飽和流となる。本研究は、「浸透流の挙動」を、①実際の処分場における時系列非破壊調査、②焼却灰等廃棄物を満たした土槽を用いた室内実験、によって検討し、その結果を比較対照データとして、このような場に最適な数値計算法を開発することを目的とする。このような不均質場の浸透流をモデル化し、シミュレートできれば、その結果は最終処分場における安定化の判断とその対策に有効な情報を提供することとなる。しかし、例えば「水みちの形成」といった、不確実性の高い場に数値計算を導入するのは極めて難しい。本研究では、パーコレーションとよばれる確率論的手法によって、不均質な浸透流場をモデル化しシミュレートした場合の、現場への適合性について詳細な検討を加える。
2.研究成果
 土槽を用いた実験結果に対して定量的検討を実施した。
①比抵抗を用いた時系列非破壊探査結果の解釈・・・・焼却灰を充填した人工コアサンプルを作製し、その間隙水の電気伝導度を様々にかえて含水飽和状態におけるコアの比抵抗を測定した。その結果、焼却灰の地層比抵抗ρrと間隙水比抵抗ρwの関係は、多くの場合、並列回路モデルの式で説明できる。一方、Archieの式はρw<0.8Ωmの領域で適用可能であった。
②土槽内埋立層中の浸透水の挙動・・・・浸透水の挙動(浸透速度や経路など)について、水収支(散水量と排水量)、埋立層内に設置した含水率計による測定値および1回の散水中に複数回取得した比抵抗プロファイルをベースに検討した。散水した水が土槽内埋立層を浸透し排出されるまで平均約7時間、鉛直方向の見かけ浸透速度3.3×10-3cm/secという結果となった。また、時系列で得られた比抵抗プロファイルと浸透現象は調和的であった。
③パーコレーション理論を用いて水みち形成を数値的にシミュレートした過去の文献調査を行ったほか、必須パラメータ項目およびその獲得法について検討している。