表題番号:2009B-135 日付:2010/02/18
研究課題微生物凝集および微生物生態の理解による高速アンモニア処理システム構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 常田 聡
(連携研究者) 高等研究所 助教 青井 議輝
(連携研究者) 理工学術院 客員研究助手 大坂 利文
研究成果概要
これまでに我々は,上向流好気性流動床リアクターを用いて硝化細菌グラニュールの形成に成功している。硝化細菌グラニュールは硝化細菌を高密度に保持し,沈降性が極めて高いため,排水中の窒素除去の高効率化に有効である。しかしながら,硝化細菌グラニュールの形成メカニズムは未だ不明確な点が多く,実用化への大きな障害となっている。本研究では,分子生物学的手法を用いて硝化細菌グラニュールの微生物生態構造を解析し,どのような細菌種がグラニュール形成に寄与しているかを明らかにすることを目的とした。まず,クローニング法を用いて硝化細菌グラニュールに存在する細菌種の群集構造解析を行った。その結果,16S rRNA遺伝子解析から,完全無機条件で馴養された硝化細菌グラニュールには,硝化細菌以外にも有機物を消費する多様な従属栄養細菌が存在し,複雑な生態系が構築されていることが明らかになった。また,アンモニア酸化酵素amoAをコードする機能遺伝子解析から,グラニュール形成に伴いNitrosomonas mobilisに近縁なクローンとアミノ酸配列が高い相同性を示すクローンが得られたため,初期形成中のアンモニア酸化細菌(AOB)はN. mobilis系統に属することが示唆された。さらに,fluorescence in situ hybridization(FISH)法を用いて各細菌種の存在割合,空間分布解析を行った結果,N. mobilis系統に属するAOBは,初期形成グラニュールにおいて優占化していることが明らかになった。以上の結果より,グラニュール形成においてN. mobilis系統に属するAOBが選択的に凝集・粒状化し,初期のグラニュール形成に重要な役割を果たしていることが示唆された。