表題番号:2009B-130 日付:2010/03/01
研究課題階層性を有するMn系合金の結晶構造と物性の特徴
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 小山 泰正
研究成果概要
 金属Mnのα-Mnとβ-Mn相は、12配位多面体等の複雑な配位多面体から成る配位多面体構造を有している。ここで興味深い特徴は、金属MnにSiを添加したMn-Si合金にもR相と呼ばれる配位多面体構造相が出現し、その結果、Mn-Si合金の7at.%Si組成付近には (β-Mn→α-Mn+R)共析反応が存在することである。これら相の物理的特性については、α-Mn相でのノンコリニアーな反強磁性磁気秩序、R相ではその構造中に共有結合性ボンドの存在が指摘されている。そこで本研究課題では、(β-Mn→α-Mn+R)共析反応での配位多面体構造間の構造変化に注目し、その結晶学的特徴を透過型電子顕微鏡で調べ、さらに得られた結果を基に、これら構造変化の特徴および物理的特性との相関について検討した。
 本研究では、まず構造変化での方位関係を決定した。その結果、(β-Mn→α-Mn)構造変化では一種類、(β-Mn→R)変化では三種類の方位関係の存在が明らかとなった。ここで後者での三種類の方位関係の中で、二種類の関係は、より高いMn組成域で出現すること、その出現確率は全体の30%程度であることが分かった。このため、これらの関係はSi置換によって誘起された、付加的なものと判断した。そこで、得られた方位関係を用いて構造変化での原子変位を決定したところ、両構造変化とも単純な原子変位によって説明できることが明らかとなった。特に興味深い特徴は、得られた方位関係が、β-Mn構造の14配位多面体対からα-MnおよびR構造での16配位多面体対への、構造単位の変化によって決定されることである。さらにα-MnとR相での物理的特性の違いについては、16配位多面体の内部に存在するFriauf多面体の相違によることも理解された。具体的には、α-Mn相でのFriauf多面体の原子サイトは基本的にMn原子によって、一方、R相ではすべて混合サイトによって特徴付けられている。