表題番号:2009B-128 日付:2010/02/19
研究課題超多数マルチエージェントシステムの能力を引出す交渉プロトコル・戦略の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 菅原 俊治
研究成果概要
近年のインターネットやセンサーの高機能化などにより,複数かつ大量のエー
ジェントが相互に協調を行う場面が想定される.たとえば,インターネット上
の電子商取引では,商品の提示,顧客管理,在庫管理,配送,決済処理などの
異なるエージェントが協調して実現されている.特に,人気のある商品を扱う
サーバでは,その負荷が問題となる.また,サプライチェーン管理,グリッド
(特にPCグリッドやエージェントグリッドでは,適切なタスクを適切な計算機
に割当て,全体として効率の高い処理を実現することが求められる.このよう
な状況は今後とも進行し,広域に配置された非常に多数のPCが相互に競争ある
いは協調しながら処理を進める大規模マルチエージェントシステムの研究が必
須となる.

このような多数のエージェント群が全体として効率的な処理を行うためには,
個々のタスクを適切なエージェントに割り当てる必要がある.このような観点
から,マルチエージェントシステムでは,交渉プロトコルによるタスク・資源
割当ての研究が行われきた.たとえば契約ネットプロトコル(Contract Net
Protocol, 以下CNP)の研究が分散AI研究の初期からなされ,その改良や,情報
経済学の観点からもオークションの研究などがある.しかし工学的な観点から,
特に大規模なシステムに適用した場合,その処理効率を十分にあげることがで
きるのかは不明である.

そこで我々はCNPにおいて,タスクが単純な構造を持つという仮定のもと,エー
ジェントが自ら動的に広報および落札戦略を確率的に選択する手法を提案し,
その評価を行なってきた.本研究では,本理論の適用範囲を広げるため,タス
クの構造をより一般的なものとし,そこでタスクの負荷に応じた落札戦略の選
択とその効果について調べた.さらに負荷情報は直接得られないので,それを
間接的に推定する手法を提案し,合わせてその効率化の度合いを調べた.概ね
20%以上の効率化が実現できる可能性があることが分かった.