表題番号:2009B-125 日付:2010/04/02
研究課題液体水素を燃料とする超音速ターボエンジンの非定常シミュレータの開発研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 佐藤 哲也
研究成果概要
 本研究では、将来の極超音速輸送機に向けてJAXAで研究開発中の極超音速予冷ターボジェットエンジンを対象とし、非定常シミュレータを構築することを目的とした。
 まず、非定常的要素の強い、液体水素の相変化を含めた熱流動特性を解明し、モデル化を行うため、気液二相流に関する実験を行なった。静電容量型ボイド率計と高速度ビデオ撮影(画像判別法)によるボイド率計測という二つの手法を構築し、水-空気、軽油-空気について適用した。その結果、5%以下の精度でボイド率計測が可能であることを確認した。さらに、これらを水素を用いた予備実験で適用したところ、二相状態においては定量的にボイド率が計測されることや、超臨界時の密度変化による静電容量の変化を捉えることができた。一方、極低温による静電容量の温度ドリフトという問題点が明らかになった。また、同時に圧力損失を計測し、水素二相流におけるクオリティと摩擦係数に関する定性的な評価を行った。今後は、実験の精度を向上させ、また、伝熱特性を評価することで、二相流状態の熱流体特性のモデル化を行なう予定である。
 第二に、汎用性のある非定常シミュレータの枠組みを構築し、実際の予冷ターボエンジン燃焼実験との比較を行なった。解法としては、エンジン内の各流体機器を1ないし2つの要素としてモデル化し、流体の保存方程式を解くボリュームジャンクション法を採用した。圧縮機はP-Qマップを用いてモデル化し、バルブやタービン等においてはチョーク計算を導入した。実験結果と比較したところ、定量的にもおおよそ一致し、この手法が有効であることが確かめられた。また、エンジンがウインドミル作動している状態についても、圧縮機の流体抵抗をモデル化し、組込むことによって再現することができた。
 本研究によって、エンジン非定常シミュレータの完成に近づくとともに、液体水素燃料のマネジメントに関する貴重なデータを取得することができた。