表題番号:2009B-121 日付:2010/04/08
研究課題波面コード化の物理に基づく高機能化
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 小松 進一
研究成果概要
波面コード化(WFC)による結像光学系の被写界深度拡大(EDOF)は,セキュリティー応用などの新しい分野における小型画像情報機器の研究・開発を活性化させ,社会に大きなインパクトを与えることが期待される。
 本研究では,波面コード化の物理のさらなる解明を行い,その結果に基づいてWFCの高機能化を図るために,以下の課題に取り組んだ。
 1.波面コード化の物理の解明
 2.自由曲面位相板による波面コード化(FPM‐WFC)のEDOF特性の検討
 3.カラー物体を対象とするFPM‐WFCによるEDOF効果の実験的検証
 4.FPM‐WFCの虹彩認証システムへの応用とEDOF効果の実験的検証
 その結果,
 1.等しい大きさの球面収差をもつ凹レンズと凸レンズを横ずらしして3次位相板(CPM)が生成できることを,焦点はずれが与える瞳位相分布の変化に基づいて説明した。
 2.同じ厚さの自由曲面位相板(FPM)と3次位相板(CPM)のEDOF特性を正負両方の焦点はずれ領域で比較した。FPMはCPMの2倍程度のEDOF効果があり,格段に滑らかなMTFを与えることが示せた。
 3.通常の蛍光灯照明下で,ルービックキューブ(物体距離:100cm),カラーケーブル(140cm),電圧計(150cm)を配置し,自由曲面位相板を絞り面に置いたデジタル一眼レフカメラ(Canon EOS1Ds MARKⅢ)で撮像した。物体全域にわたって鮮明なカラー像が再生され,カラー物体を対象とするFPM‐WFCによるEDOF効果が確認された。
 4.虹彩画像(物体距離:30~80cm)を用いてFPM‐WFCの実験を行い,復元された最終画像を比較した。大きな焦点はずれ(-10~+10cm)に対しても画像変化が小さく,通常光学系に比べて十分なEDOF効果が認められた。また, -15~+15°の画角範囲において画像変化が小さく,画角依存性も少ないことが確認できた。虹彩部分を極座標変換して得られたアイリスコードも,FPM‐WFCでは,実験した物体領域全域において鮮明であり,虹彩認証システムの被写界を大きく拡大できた。