表題番号:2009B-120 日付:2010/03/31
研究課題河川に生息する魚類のライフサイクルリスクアセスメントに関する調査研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 榊原 豊
研究成果概要
 魚類のライフサイクルリスクアセスメントを実施する場合、対象とする魚類の生息域とライフステージ毎のリスクの評価が重要になる。これまでの研究から都市河川に生息する淡水魚15種に及ぼす8つの主要ストレスおよびその応答を明らかにした。本研究では日本に存在する普通種であるオイカワを異なる河川で採捕し、既往文献より得た8種類のマイクロサテライトマーカーを用いて遺伝的多様性を比較し、生息域の特定に本分子マーカーが適用できるか否かについて検討した。
 対象河川は埼玉県本庄市のM, K, O川である。フィールド調査及び遺伝子分析の結果、8種類中6種類のマーカーが今回使用可能であり、集団間の遺伝的分化を調べるための遺伝子分化係数FstとNeiの遺伝距離Dを用いて主座標分析と系統樹の描画を行った。その結果、FstとDのいずれの指標を用いても同様の系統樹が得られ、遺伝的分化は流域内で大きく異なることはなかったが、河川の上下流域および支流間でわずかながら異なることがわかった。このことから、今回の調査河川では3つのゾーンに生息域が分割されると推察された。また、環境用水の導入により、他河川から魚類が流入している可能性があることが考えられた。今後は異なる魚種の分子マーカーを用いてDNA解析を行い、魚類生息域の特定手法を確立する予定である。