表題番号:2009B-116 日付:2011/02/27
研究課題L-アミノ酸リガーゼのライブラリー構築と効率的ペプチド合成プロセスの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 木野 邦器
研究成果概要
我々は、ペプチドの効率的な生産法確立を目的として、ATPの加水分解反応と共役して遊離アミノ酸同士の連結反応を触媒するアミノ酸リガーゼに着目した研究を進めている。特にL-アミノ酸リガーゼを用いた短鎖ペプチド合成研究において、これまで目覚しい成果をあげてきたが、オリゴならびにポリペプチド合成への新たな展開を考え、報告例のないオリゴペプチドを合成可能な新規L-アミノ酸リガーゼを探索するとともに、他のペプチド合成酵素としてNRPS(Non-Ribosomal Peptide Synthesis)や新規ポリアミノ酸合成酵素など新領域での酵素探索も推進した。
微生物の生産するトリペプチド性の二次代謝産物に着目し、これら生産菌からの合成酵素の探索を検討した。その結果、トリペプチド以上のオリゴペプチドの合成活性を有するジペプチド合成酵素RizAの取得に成功した。リゾクチシン生産菌からは、精製酵素のN末端配列を決定して得た新規アミノ酸配列の酵素を取得した。さらに、当該酵素遺伝子の周辺領域の解析によって、トリペプチド以上のオリゴペプチド合成を可能とする初めてのリガーゼ酵素RizBの発見にも成功した。また、遺伝子クラスターの解析を進め、抗生物質リゾクチシンの生合成経路を推定することもできた。さらに、オリゴペプチド合成を可能とするRizBのアミノ酸配列情報を基にin silicoスクリーニングを実施し、新たに6種類のオリゴペプチド合成反応を触媒する酵素を見出すことにも成功した。現在、取得した多様なジペプチドならびにオリゴペプチド合成酵素を組み合わせ、任意のオリゴペプチド合成システムの開発を目指し検討を行っている。これまでに固定化酵素を用いた基本プロセスの構築に成功しており、具体例として血圧上昇抑制効果のある有用トリペプチドの生産も可能となった。