表題番号:2009B-114 日付:2010/04/12
研究課題層状遷移金属酸化物へのオルガノホスホン酸のグラフト反応を利用した層表面修飾
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 菅原 義之
研究成果概要
イオン交換性層状ペロブスカイトは, Ruddlesden-Popper相と交換性陽イオンの密度がRuddlesden-Popper相の半分となっているDion-Jacobson相がある.これらの化合物を酸処理すると,層間のアルカリ金属イオンがプロトンに置き換わったH型層状ペロブスカイトが得られる.そこで本研究では,Dion-Jacobson型層状ペロブスカイトであるHLaNb2O7・xH2O(HLaNb)を用い,有機ホスホン酸による層表面修飾を検討した.HLaNbのデコキシ基誘導体(C10-HLaNb)とフェニルホスホン酸(PPA)またはアルキルホスホン酸[CnP (nは炭素数)]をモル比1 : 4で加え,溶媒として2-ブタノン20 mL(含水量1 mass %)とともにアンプル封入し80℃,48 h反応させ,生成物を得た(PPA/C10-HLaNb,CnP/C10-HLaNb).これを遠心分離し,アセトンで洗浄した後,風乾したものを試料とした.反応後,XRDパターンにおいて,C10-HLaNbのペロブスカイト層と垂直方向の規則性を示す(001)面による回折線が消失し,新規回折線が出現した.それらの回折線のd値はPPA/C10-HLaNbでは2.31 nm, CnP/C10-HLaNb では2.09~5.26 nmであった.反応生成物の31P MAS NMR測定では,PPA/C10-HLaNbでは13 ppm, CnP/C10-HLaNbでは28~30 ppmにそれぞれ1本のブロードなシグナルを観測した.これらの値はそれぞれのホスホン酸のケミカルシフトから2~11 ppm高磁場へシフトしたものであり,P-O-Nb結合の生成が示唆される.これらの結果から,有機ホスホン酸が層表面にグラフトしたことが明らかとなった.