表題番号:2009B-112 日付:2010/04/09
研究課題商業施設における空間構成要素による飽き・誘引・空間予測
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 渡辺 仁史
研究成果概要
建築空間に対する印象評価は、これまではSD法などを用いた主観的な評価にとどまっており、人間の印象評価を客観的に明らかにしたものはない。そこで、空間に対する心理を客観的に把握する手法を開発するため、以下の二つの研究を行った。
○興味の喚起と注視行動との関係(心理と行動との関係)
人間が興味を抱く際の心理は、人間の視線における注視点の変移と関係があると考え研究を進めた。これが明らかになれば、人間の視線の変移の仕方により、その時の人間の心理を明らかにすることが可能となる。
まず興味を抱いた際の発話と、注視点の変移との関係を探るための実験を行った。具体的には、商業施設内を歩行時、興味を抱いたモノや空間に対する発話があった時の注視点変移と、発話のない時の注視点変移を比較した。
その結果、発話がない(興味がない)時よりも、発話があった(興味がある)時の注視点の変移には、近く(3m以内)を見て遠く(3mよりも遠く)を見るという注視行動が多く含まれることが明らかになった。
○注視行動と空間との関係(行動と空間との関係)
昨今、複雑な空間構成を持つ商業施設が多く建設され、そこには多くの人々が集まっている。それらの人々の歩行時の心理状況を把握できれば、心理状態に合わせたさまざまなサービスが可能となる。
そこで、先に明らかになった、近く(3m以内)を見て遠く(3mよりも遠く)を見るという注視行動を誘発する空間を明らかにし、人間が興味を抱きやすい空間を把握した。
具体的には、百貨店形式の建物と、空間構成が複雑な建物の二施設において、空間と注視点の変移との関係に関する実験を行った。その結果、1)通路幅が6~8mの通路、2)奥行40~50mもしくは奥行き10~20mの通路、3)曲がりのある通路、4)吹抜けのある通路において、注視点変移が多くなり、これらの空間では興味を抱きやすいことが明らかになった。