表題番号:2009B-104 日付:2010/04/14
研究課題患者テーラーメイドモデルを用いた定量的な治療を実現する医用システムの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 山川 宏
(連携研究者) 理工学術院 教授 藤江 正克
(連携研究者) 理工学術院 教授 高西 淳夫
(連携研究者) 理工学術院 准教授 宮下 朋之
研究成果概要
本研究課題では、患者個人が持つ身体的形状や物性に応じた外科治療を行う医用システムを開発するため、核となる2つの要素技術「(1)患者テーラーメイド臓器物理モデルの構築技術」と「(2)臓器変形の数値シミュレーション技術」について、肺がん治療をモデルケースとした研究を行った。

(1)患者テーラーメイド臓器物理モデルの構築技術: 外科手術中に生じる臓器変形を定量的に解析する際に必要となる「臓器物理モデル」を患者毎に構築する技術について、肺臓をモデルケースとした研究開発を行った。具体的には、(a)医用X線CT画像から細部血管と細径気管支まで含む詳細な肺形状の抽出、(b)肺組織が有する力学的な粘弾性特性の取得、(c)実測された形状と力学的特性に基づく高精度な肺臓の「臓器物理モデル」構築、のそれぞれについて実現した。

(2)臓器変形の数値シミュレーション技術: 外科手術中に生じる臓器変形を定量的に解析するための数値シミュレーション技術について、肺虚脱時のがん位置同定をモデルケースとした研究開発を行った。具体的には、(1)項において開発した肺臓の「臓器物理モデル」を活用し、汎用非線形構造解析ソフトウェアを用いた有限要素解析を実施した。その結果、従来考えられていたよりも肺虚脱時のがん部の移動量が小さいことが示されるなど、本研究課題において新たな知見を得るにいたった。

今後はこれら本研究課題で得られた2つの要素技術を基盤として、継続的・発展的に研究開発を実施することを計画している。本研究課題を実施する過程において現在までに、研究代表者・連携研究者・研究協力者・学外の関連研究者らが十分連携した研究協力体制を構築してきており、今後さらなる共同研究成果発信や共同研究プロジェクト新規提案などの活動が見込まれている。