表題番号:2009B-092 日付:2013/04/28
研究課題わが国製造業における新たな原価計算指針の提案
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 教授 清水 孝
研究成果概要
 わが国における『原価計算基準』は、昭和37年に中間答申されたものである。爾来、製造業における生産方法の進展は目覚しいものがあるにもかかわらず、『原価計算基準』はまったく改訂されることはなかった。このことから、しばしば『原価計算基準』が有用ではないという指摘がなされることがある。
 本研究では、こうした指摘を受け、『原価計算基準』上の規定のみでは正確かつ適切な原価計算が不可能であるかどうかについて探求し、必要であれば、新しい原価計算の指針を提案することを目的としている。
 2009年度においては、本格的な質問表調査を行う前段階として、いくつかの企業から原価計算実務における工夫や問題点を調査することに主眼を置いた。具体的な方策としては、財団法人産業経理協会内に「現代の原価計算研究会」を設置し、石油メーカー、石油化学メーカー、産業機器メーカー、電機メーカー、文具メーカー、医療用品メーカー、化学・日用品メーカー、光学品メーカーなどの原価計算実務について検討を行った。また、平行して大手電機メーカー、産業機器メーカーなどにヒアリングを行った。
 その結果、各企業は『原価計算基準』に準拠しながらも、工夫を行って、各企業の生産活動を適切かつ正確に写像するような原価計算を行っていることがわかった。これらの点についての詳細は、『産業経理』に発表する予定である。
 また、製造業の原価計算よりも深刻な問題を抱えているのが、サービス業の原価計算である。これは、原価対象としてのサービスが、製品ほど明確でないことに起因するものである。しかし、サービスの原価計算が適切になされないとすれば、サービス業では何を基準として管理会計を実行すればよいのか、という根本的な問題に突き当たる。そこで、サービス業の中でも、典型的なサービス業と製造業の両方の性質を併せ持つ宿泊産業を対象として、2010年2月から3月にかけて原価計算および原価管理における調査を行った。この結果については現在集計中であり、『早稲田商学』に集計結果の分析とともに掲載する予定である。