表題番号:2009B-090 日付:2011/05/30
研究課題技術シーズからその用途を開発する方法の開発とその理論的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 教授 黒須 誠治
研究成果概要
 本課題のテーマを構成している、「技術シーズからその用途を開発する方法」を“できる展開法”と筆者は称している。できる展開法の応用を、できる展開法によって開発した。それが、研究成果発表の(2)である。つまり、できる展開法を使用して技術ロードマップを描き出す方法を開発した。
 技術ロードマップとは、ある技術を達成するためにはどのような技術を開発していけばよいか、それをリストアップし、同時にその経路を明確化した、道路地図のようなものである。このようなロードマップを作成するには、まず、“ある技術”、つまり目的地を明確化する必要がある。目的地を明確化したら、目的地に行くための途中の経路すなわち途中の技術をリストアップし、同時にその経路を明確化する必要がある。その作業を行う方法として、目的(機能)展開(法)を使用する。また同時に本課題の一つであるできる展開法を使用する。まず目的(機能)展開を行って、目的地を探索あるいは明確化する。目的(機能)展開は、それ自身がすでに技術ロードマップの性質を有している。しかし、目的(機能)展開にできる展開を付け加えると、さらに技術ロードマップの経路が追加される。場合によっては思いがけない目的(機能)も発見できる。このような経路を付け加えていくと、さらにマップ(地図)らしくなる。
 本研究課題では、もうひとつの研究成果(1)も大きな成果となった。それは新製品開発の発想手法としてのできる展開法である。一般に、新製品開発は、まずニーズをつかみ、つぎにつかんだニーズを満たす物を創りあげていく。この2つのプロセスのうち、本課題の研究は、後者のほうに関係する。できる展開は、ニーズを満たす物を創りあげていく過程で、最初に設定したニーズとは異なるニーズを満たす物を創る発想をすることに使える。それもまた新製品といえなくはない。ということは、新製品を創るとき、ニーズをまずつかむことから始めるが、そのニーズを満たす物を創る過程で、また別のニーズを発見する作業もまた、新製品開発作業に含めることである。そこで、新製品開発では、できる展開法も無視できない有力な方法として位置づけることができる。むしろ、現実の企業では、できる展開の発想を使用して多くの製品を創ってきたのではないかと、筆者は推定している。(実際にそうかどうかは、ここでは問題にしない。本課題はあくまでも発想の仕方を追究していくことであって、現実の実証研究ではない)。