表題番号:2009B-078 日付:2010/04/10
研究課題ゲノムにおける高頻度組換え部位の形成基盤:新視点からの解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教授 大山 隆
研究成果概要
 研究費の関係から、出芽酵母第3染色体の間期クロマチン構造をコンピュータ計算により予測し、高頻度組換え部位の特徴を解析することにした。構造予測は以下の方法で行った。まず、柔軟性の異なる約500 bpのDNA断片を数種類用意し、原子間力顕微鏡(AFM)で観察した。そして、Moukhtarらの方法(Phys. Rev. Lett., 2007)に従って、AFM像から持続長を決定した。次に、得られたデータをもとにDNAの相対的柔軟性と持続長との関係を明らかにし、第3染色体内のすべてのリンカーDNAの持続長を割り出した。そしてそのデータから、DNAの単位長さを3 bpとした場合の結合角θを計算して各リンカーの拡がりを計算した。また、ヌクレオソームを跨いだリンカーDNA間の角度は90度とし、リンカーDNAの回転的位相に合わせてヌクレオソームを配置した。このようにしてモデリングした第3染色体の空間的拡がりは、この染色体がある時間断面でとりうるひとつの状態と考えることができる。従って、特定の領域間の空間距離を測定するために、このようなモデリングを500回以上繰り返して距離の平均値を求めた。得られた結果は、すでに報告のある実験データと全て良い一致を示すことが判明し、モデリングの手法の正しさを証明した。従って我々は、間期クロマチンの構造モデリングに世界で初めて成功したものと思われる。現在、このモデルを用いて高頻度組換え部位領域の特徴を解析している。