表題番号:2009B-068 日付:2010/04/10
研究課題地方都市の大型店跡地問題に関する地理学的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教授 箸本 健二
研究成果概要
 本研究課題では、まずパイロットスタディを行う対象地域として、2000年以降に大型店の撤退行動が顕著な九州(沖縄県を除く7県)を選定し、以下の3つの手順で分析を行った。第1は、大型店の業界名簿を時系列で整備し、中心市街地からの撤退事例についてデータベースを作成したこと、第2は、主要チェーンストアの経営実績をIR情報および報道資料等から整理し、店舗撤退行動の背景を検討したこと、第3は、典型的な地域を2カ所選定し、関係各所のヒアリング調査を実施したことである。
 第1については、日本スーパーマーケット名鑑の2000年度版、同2005年度版、2010年度版をもとに、対象地域の主要都市(人口3万人以上)における大型店の出店・撤退行動のデータベースを作成した。ここから、主要都市における大型店の撤退行動を、1)当該都市圏からの撤退、2)郊外移転にともなう都心店の撤退(スクラップ・アンド・ビルド)、3)企業そのものの倒産・買収にともなう店舗消滅という3つのパターンに分類・整理した。第2については、主要チェーンストアのIR情報ならびに報道資料をもとに、対象期間における各チェーンの経営情報を把握し、撤退の理由が、1)当該店の業績不振、2)新店舗への置き換え、3)競合店との競争など、当該店舗そのものに原因がある撤退行動だけでなく、4)チェーン全体の業績不振(倒産・買収を含む)5)物流コストの縮減を目的とする広域での撤退、6)減損会計に対応した店舗整理など、企業全体の広域戦略の中での撤退行動が相当数あることを明らかにした。第3については、郊外型ショッピングセンターとの競合が激化する中で、市の第3セクターが設立した大型店の倒産を経験した佐賀県佐賀市と、郊外移転にともなう中心市街地店舗の撤退跡地に、商店街があらたに食品スーパーを誘致した大分県臼杵市のケースについて、行政、商工会議所、TMO、商店街振興組合など関係各所へのヒアリング調査を実施した。