表題番号:2009B-067
日付:2010/04/07
研究課題地理教育の系統化のための基礎的研究
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 教育・総合科学学術院 | 教授 | 池 俊介 |
- 研究成果概要
- 本研究では、日本における系統的な地理教育カリキュラム構築の基礎的作業として、地理教育の長い伝統をもつポルトガルの初等・中等教育段階における地理教育の学習目標・内容・方法の特色とその系統性について明らかにすることを目的とした。ポルトガルでは、基礎教育第1期の後半(第3~4学年)の「環境科」、第2期(第5~6学年)の「地理歴史科」、第3期(日本の中学校)・中等教育(日本の高校)の「地理科」の各教科において地理教育が行われているが、本研究ではとくに基礎教育第3期を中心に、地理学習の特色を明らかにしようと試みた。その結果、以下のようなことが分かった。「環境科」「地理歴史科」における「観察」「位置」「地形」「地球儀・地図で見る国・大陸」「ポルトガル地誌」等に関する基礎的な学習を踏まえ、基礎教育第3期の「地理科」では、地理的事象を生ぜしめる自然的要因と人文的要因の相互関係についての認識を深め、地球環境を共有する市民としての意識を育てることを目的としている。具体的には「土地-学習と表現」「自然環境」「人口と居住」「経済活動」「発展のコントラスト」「環境と社会」という6つのテーマが提示され、これらを具体的な事例(自国のほか世界の2地域を選択)を通じて学習するというカリキュラム構成がとられている。また、実際の学習では、地図・統計等を用いた情報収集から問題の解決に至るまでの一連の学習プロセスのほか、「フィールドワーク」「グループでの探究活動」「見学」「シミュレーション・ゲーム」「ケーススタディ」等の活動が重視されており、義務教育の段階で地理的な学習能力がしっかりと子どもに身に付くような指導が求められている。なお、こうした地理的な学習方法のほか、自国・世界についての地誌的な知識の獲得も市民にとって必要不可欠なものとして同時に重視されている。学習方法の習得のみを重視するのではなく、地誌的な知識も重視することで両者のバランスをとっている点は、今後の日本の地理教育カリキュラムのあり方を考える上でも示唆に富む。