表題番号:2009B-060 日付:2010/04/10
研究課題高次遺伝情報の解読:エキソンのDNAだけがもつ特異的柔軟性の生物学的意義
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教授 大山 隆
研究成果概要
 第1エキソンの上流には必ずプロモーターが存在する。プロモーターは硬いDNAでできていることが知られている。同時に進行させている他の研究との関連で、本研究ではプロモーターから第1エキソンにかけて形成されるクロマチンの特徴を明らかにすることにした。この解析からも、エキソンが柔らかいDNAでできている理由を解明する手がかりが得られると考えたからである。プロモーターには出芽酵母CYC1プロモーター(チトクロームcアイソフォーム1遺伝子のプロモーター)からUAS配列を除去したものを用いた。なお、このプロモーターには、TATA1~TATA5とよばれる5個のTATA配列があり、転写には上流側に存在するTATA1とTATA2が関与していることが知られている。間接末端標識法、ヌクレオソームリピ-トアッセイ、ChIPアッセイ、およびDNaseIフットプリントアッセイによりクロマチン構造の解析を行った。その結果、このプロモーター上には1つ、さらにその上流には2つのヌクレオソームがポジショニングすることが明らかになった。なお興味深いことに、やはり硬い構造であるベントDNAをUAS欠失領域に挿入すると、これらのヌクレオソームのスライディングが容易になり、TATA3配列の露出度が上がって転写が活性化することが明らかになった。残念ながら、まだエキソン1領域のクロマチン構造に関する情報が得られていないが、今回の解析から大胆な仮説を立てると次のようになる。エキソン以外の領域にはヌクレオソームのポジショニング情報が含まれている(遺伝子の機能制御のため)。一方、エキソンにはこのような情報は不必要でヌクレオソームが出来さえすれば良い(単にゲノムDNAの凝縮のため)。現在、さらに詳細な解析を進めている。