表題番号:2009B-055 日付:2010/02/19
研究課題唐宋詩文における園林の環境とその評価
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 助手 紺野 達也
研究成果概要
 本研究課題は、唐宋詩文に表現された荘園や庭園といった、いわゆる「園林」の環境とその評価について考察するものである。
 本年度は、研究代表者が従来から研究をすすめている盛唐の詩人の王維の詩文について重点的に検討した。とくに王維の二つの別荘、すなわち著名なモウ(車罔)川荘と終南別業に関する詩文とその評価について個別的研究を行った。具体的には、王維の代表作の一つとされ、当時の詞華集である『河岳英霊集』や『国秀集』にも採録されている「終南別業」詩に注目し、王維の文学と園林の関係を調査した。まず、王維の宋版の別集に見える題下注や『酉陽雑俎』、『太平広記』、『長安志』など唐宋の複数の関連する資料から、この詩が制作された時期、王維が実際には長安に住居を有しており、折々にこの終南山の麓の別荘である終南別業に赴いていたことを指摘した。ついで、いわゆる「半官半隠」の点で共通するモウ(車罔)川荘との関係については、王維は自らの詩のなかで「終南(山)」と「モウ(車罔)川」を使い分けていることを明らかにした。そして、製作時期の点から、この「終南別業」詩が『モウ(車罔)川集』などに先行する作品と位置づけられる、と論じた。
 その他、唐宋詩文、特に宋代詩文における園林の特徴を深く理解するため、2009年12月から翌年1月にかけて中国江西省を対象に実地調査を行った。具体的には九江市、南昌市、吉安市、カン州市およびその周辺地域に点在する詩文及び文人に関する遺跡の調査を行った。また、実地調査を円滑に行うため、早稲田大学図書館、国会図書館などに所蔵される詩文集、地理書、地方志などを用いた事前調査を行った。