表題番号:2009B-038 日付:2010/04/09
研究課題市場経済下における中国都市文化の基礎的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 准教授 高屋 亜希
研究成果概要
 2001年以降の文化年鑑(『21世紀中国文化地図』)を翻訳、同時代文化に関する基礎資料の蓄積・整理作業を継続して行い、2007年についてまとめた『Chinese Culture Review』第6巻を刊行したほか、重要な文化批評5篇を翻訳した。
 また、中国の文化公演団体(演劇・音楽・舞踏など)で進行している一連の市場化改革について、中国交響楽団を事例にその歴史的経緯と現況等を整理・分析し、論文「「湯沐海事件」の背景-交響楽団の市場化をめぐって」を発表した。1990年代半ばの競争原理の導入によって運営の効率化・技術の向上をはかったものの、競争原理が人材の引き抜きや団体間の競争激化をもたらし、社会主義下で整備された文化公演団体のヒエラルキーが崩潰したこと等の結論を得た。
 研究協力者である千田大介も、文化公演団体の市場化改革について京劇を事例に、論文「京劇の黄昏-梅蘭芳の「消費」をめぐって」(『中国同時代文化研究』2号所収)を発表した。同論文では、1990年代の競争原理の導入以降、入場料金の値上がり等によって伝統劇の文化公演団体が旧来の観客を失う一方、同時代の伝統文化ブーム等の取りこみをはかっていること等、梅派の衰退と程派の隆盛との関連から指摘を行った。
 またもう一人の研究協力者の山下一夫は、論文「中国におけるライトノベルの勃興と展開」(『中国同時代文化研究』2号所収)を発表し、中国オリジナルのライトノベル成立の経緯を整理した。従来、台湾香港からの影響が推測されていた中国オリジナルのライトノベルについて、韓国からの影響を具体的に明らかにした。