表題番号:2009A-955 日付:2010/04/10
研究課題日本近代国家形成期における反欧化主義
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 大学史資料センター 助手 真辺 将之
研究成果概要
成果の第一としては、反欧化の立場に立っていた人物のうち、これまで研究を進めてきた西村茂樹にかんする研究をまとめ、『西村茂樹研究―明治啓蒙思想と国民道徳論』(思文閣出版)として出版したことがあげられる。また研究途上にある鳥尾小弥太に関しても、特にその仏教思想と近代政治とのかかわりについて掘り下げるために史料を読み進めることができた。近い将来、論文化したうえで、これまでの研究とまとめて研究書として出版することを視野にいれて研究を進めることが出来た。
成果の第二としては、今後研究すべき対象として考えている谷干城・三浦梧楼といった人々に関する資料調査を行うことができた。特に国立国会図書館や宮内庁書陵部に所蔵されている資料の所在状況を調査したほか、明治前期の翻訳草稿を集めた資料集を購入することができ、明治政府要人の西洋認識について検討するための材料を得た。同資料集については現在読み込みを進めており、今後論文化をすすめていきたいと考えている。また「深谷博治旧蔵文書」についてもアルバイトを雇用して整理と調査を行い、同文書のうち特に重要な一部分については論文「内大臣府文書(明治天皇御手許書類)に関する基礎的研究」を目録を附載して発表することができた。
成果の第三としては、論文「政党認識における「欧化」と「反欧化」」を発表し、欧化と反欧化とのせめぎあいの中からどのような政党観が生じ、それが日本の政治状況にどのような影響を及ぼしたのかということを、欧米との比較を交えながら論じることができた。個別の人物研究にとどまらず、総体としての「反欧化」の潮流が日本の近代にどのような意味を持っていたのかということを明らかにしようという試みであり、今後も、個別の人物に関する研究を進めていく一方で、さらにそれを総体的に検討し、日本近代国家・近代社会のなかでどのような歴史的意義を有しているのかということについて研究を進めていきたいと考えている。