表題番号:2009A-907 日付:2010/03/17
研究課題株主資本等変動計算書の導入による透明性改善効果に関する実証研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学総合学術院 専任講師 菅野 浩勢
研究成果概要
 我が国では、会社法施行に伴い、財務諸表の1つとして株主資本等変動計算書(Statement of Changes in Net Assets; SCNA)が導入され、現行の国際的な会計基準における「その他の包括利益(Other Comprehensive Income; OCI)」に相当する「評価・換算差額等の当期変動額」がSCNAに表示されるようになった。本研究では、SCNAの導入により、従来は財務諸表のどこにも表示されなかったOCI項目に関する情報の透明性が向上したことで、我が国の資本市場における効率的な株価形成が促進されたかどうかを検証した。
 我が国の一般事業会社をサンプルとした実証分析の結果、OCI項目の持続性に関するミスプライシングが、2007年3月期からのSCNAの導入に伴って縮小していることが示された。また、SCNA導入前にはOCI項目のミスプライシングを利用した投資戦略によって平均10.4%の有意に正の超過収益率が得られていたのに対して、SCNA導入後には有意な超過収益率を得られなくなっていることが示された。これらの証拠は、SCNAの導入によるOCI項目の透明性の向上がOCI項目の理解可能性を高め、ひいては資本市場における効率的な株価形成を促進する効果をもたらしたことを示唆している。