表題番号:2009A-892 日付:2010/04/09
研究課題CDF実験でのヒッグス粒子探索とLHCへの物理的繋がりに関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 寄田 浩平
研究成果概要
本研究費を軸に達成すべき点は大きく二つある。
一つ目は現行で世界最高エネルギー加速器であり、かつ既に豊富な実験データのあるCDF/Tevatron実験でのヒッグス探索結果を纏め上げることである。二つ目は、そのCDF実験での結果、経験、知識、技術を次世代エネルギーフロンティア実験であるATLAS/LHC実験に繋げ、本格的にヒッグス粒子発見(存在しない場合は早急な棄却)に役立てることである。一つ目の課題は、WH->lvbbbarというCDF実験でのエネルギースケールで最も発見能力の高い生成崩壊過程を2.7/fbの高統計データで解析することにより実行した。未だ発見に至ることはできなかったが、95%の信頼度で標準理論の5倍以上の生成断面積を棄却することに成功した。また、ATLAS/LHC実験で重要となるヒッグス粒子がττに崩壊する過程をCDF実験でも積極的に行い、その汎用性と限界を探ることができた。二つ目の課題に関しては、本研究費でCERNに出張し、現地実験責任者など多数の研究者と議論することができ、ついに2009年10月に早稲田大学が正式にATLAS/LHC実験に参加承認がなされた。また、ヒッグス粒子探索にもっとも重要なτ粒子の同定効率の改善やb quarkの精密なエネルギースケール測定の提案も行っており、既に研究室学生2名が日本物理学会(2010年3月岡山大学)で発表をし、初段階の成果をおさめている。
総括すると、本研究課題は、現在の素粒子物理学の中で最も重要なヒッグス粒子探索の実行性を高めるために有用に役立てることができ、さらに論文出版、学会発表などその成果実績も十分足るものだと思っている。今後はこの研究結果をさらに発展させ、引き続きヒッグス探索についてCDF/ATLAS実験双方の利点を生かした研究を進め、ヒッグス粒子発見へ向けて主導的役割を担いたいと考えている。