表題番号:2009A-857 日付:2019/03/25
研究課題組織に対する責任判断
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 専任講師 膳場 百合子
研究成果概要
現代社会では組織の活動に対して一般の人々が組織やそのリーダーを責めることがよくあるが、その際の責任判断が文化によって異なることが近年明らかになっている。本研究では、日米比較を通じて文化差をもたらす心理メカニズムを検討した。
組織の不祥事場面を描いた文章を異なる文化の回答者に提示した先行研究では、リーダーを責める際、アメリカ人はリーダー個人に落ち度がある場合にリーダーを責めるのに対し、日本人は、リーダー個人に落ち度がなくても、組織に非難すべき点があればリーダーを責めることが分かっている(Zemba, Young, Morris, 2006)。この文化差が、(1)日本人が組織そのものを因果や責任の主体として重視しているために生じているのか、(2)日本人が個人の利益を犠牲にして組織の利益を守ることを重視している(=リーダーに組織の責任を肩代わりさせようとしている)ために生じているのか、先行研究では明らかになっていなかった。そこで、これらの対立する解釈を検討するために、本研究では、日米の回答者に組織成員の活動が良い結果をもたらした文章を提示し、組織やリーダーがどれだけ賞賛に値するかを判断してもらった。もし(1)の解釈が正しければ、日本人はアメリカ人よりも、組織に大きな原因を帰属し、組織と代表者(リーダー)を賞賛するはずである。一方、もし(2)が正しければ、日本人はアメリカ人に比べてリーダー個人を賞賛しないはずである。結果は、(1)の解釈を支持しており、日本人はアメリカ人に比べ、組織の良い結果に対しても、組織やリーダーを賞賛していた。さらに、日本人のデータを分析したところ、組織の活動結果に対して因果的に全く関与していないリーダーにまで責任(非難や賞賛)を波及させる傾向の強い判断者は、「組織がやったことに応じた結果を組織に与えたい」という組織に対する応報動機が強いことが確認された。以上の調査結果を現在共同研究者(Maia Young, UCLA)と共著論文にまとめ、投稿中である。