表題番号:2009A-855 日付:2011/11/09
研究課題ナノボイド構造を用いた高感度分子検出
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 井村 考平
研究成果概要
 貴金属微粒子ナノ構造体において光励起される自由電子の集団電子運動(局在プラズモン共鳴)は,極めて高い光電場増強場を創りだし,その近傍に存在する分子のラマン散乱を増強することから,超高感度分子検出の要素技術として注目されている。本申請では,この微粒子ナノ構造体と,金属部と誘電体部とが反転した構造であるボイド型ナノ構造体を,新たな超高感度分子検出要素,ラマン散乱増強素子として提案した。
 研究計画では,当初,ポリスチレン球をテンプレートにして,金属薄膜にボイドを作製し,その分光評価,引き続いてラマン分光計測を行うことにしていたが,ガラス基板上でボリスチレン球の自己集積構造を作製するのに予想以上に時間を費やすことになった。また,研究室の試料作製や分光測定のための環境を整えるのにも非常に多くの時間を費やす必要があった。これらの理由から,研究の進展が遅れたが,最終的に上記の方法でボイドを試作し,当初の研究提案の核心である,原理検証を行うこと(ボイドにおけるプラズモン励起の確認)に成功した。また,電磁気学シミュレーションを用いて,ボイドにおけるプラズモン励起のメカニズムについて検討し,微粒子構造とボイド構造では,プラズモン励起の偏光特性が一致しないことが明らかとなった。詳細については,現在検討中あるが,プラズモン励起について一定の理解を得ることができた。これ以外にも,近接場顕微分光装置を自作し,その立ち上げ,基本動作の確認に成功した。顕微鏡の性能は,当初の計画以上であることが確認できた。
 以上のように,当初の計画より遅れた部分はあるが,研究提案の原理検証に成功し,当初の研究計画の目標を達成できるところまで研究を進展させることができた。来年度の早い段階に,計測法としての定量評価を終え,本研究計画の最終目標を達成できる見込みである。