表題番号:2009A-854 日付:2011/04/05
研究課題高次元超重力理論における素粒子世代構造の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 安倍 博之
研究成果概要
超弦理論の予言する超対称性と余剰次元の存在に注目し、低エネルギー有効理論として得られる高次元超重力理論において、素粒子標準理論の世代構造を実現する機構を解明するという目的で研究を行った。本研究では、超弦理論から標準理論へと向かうトップダウン・アプローチと、逆に標準理論から超弦理論へと向かうボトムアップ・アプローチという、2つの方向から解析を行った。トップダウン・アプローチでは、超弦理論の交叉Dブレーン系に双対な記述として知られている、余剰次元に背景磁場が存在するような系を考え、磁場により引き起こされる波動関数の局在化とウィルソンラインの存在及びオービフォルド化の相乗効果が、クォーク・レプトンの質量や混合などの世代構造にどのような影響を与えるかを系統的に調べた。そして、質量行列の対称性と磁束の数及びウィルソンラインの値の関係を明らかにして、その主要な部分を論文[1]に、詳細は論文[2]に発表した。この研究成果に関して、特に富士吉田で開催されたSummer Institute 2009における共同研究者との議論は大変有意義であった。また、余剰次元に磁場を持つ超対称ゲージ理論の低エネルギー有効理論を系統的に導出する手法の開発にも重要な進展が得られた。一方のボトムアップ・アプローチでは、これまでのオービフォルド上の5次元超重力理論の解析を、物質場がモジュライ多重項の下でより一般的な電荷を持っている場合に拡張して、その低エネルギー有効理論の世代構造を同定した。