表題番号:2009A-852 日付:2014/04/06
研究課題戦略タイプと設備投資予算との関連性の実証研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 教授 清水 信匡
研究成果概要
本研究の目的は、2009年3月に東証一部上場の製造企業対して行った大量質問票調査の回収結果から、設備投資マネジメントの様々な現象を明らかにすることであった。
調査の第一の目的は、企業の戦略タイプの違いが設備投資マネジメントに影響を与えていることを明らかにするとともに、戦略タイプに設備投資マネジメントを適合させることによって、企業は良い業績をあげることを明らかにすることであった。マイルズ・スノウの有名な戦略タイプ(すなわち、ディフェンダー企業、プロスペクター企業、アナライザー企業、リアクター企業)に回答企業を分類し、戦略タイプごとに設備投資マネジメントに違いが生じないか、また潜在要因に違いはないか、さらに、経済性評価技法の使い方において違いがないか、などを実証的に解明しているところである。現在のところ、中長期利益計画と年次予算における設備投資マネジメントにおいて、プロスペクター-企業が他の戦略タイプと比較して、投資プロジェクトや投資のタイミングを登録することが明らかになった。また、投資の最終決定に際して、慎重に審議することも明らかになった。それに対して、ディフェンダー企業は、中長期計画、年次計画ともに、あまり投資プロジェクトやそのタイミングを登録することはないし、最終決定に際して、慎重に審議することがないことが判明した。これは、プロスペクターが新しい利益獲得の機会の情報を常に集めて、かつリスク低減のために慎重に投資判断をしているためである一方で、ディフェンダー企業は自分の事業ドメインを深く掘り下げることに専念しているために、新たな投資機会を認識する必要は少なく、取り替え投資や、増産投資を行う特性があることに起因しているからであろう。
さらに、これまでの資本予算研究の中心テーマであった経済性評価技法については、技法を利用する目的についてのアンケートを行った。経済性評価は、これまで投資案の選択に使われることを前提にしていたが、選択するための技法というよりは、投資案作成の目標としての役割があることが明らかになっている。以上は成果の一部であり、今後随時研究成果を報告する予定である。