表題番号:2009A-807 日付:2010/03/10
研究課題倒産手続における担保権消滅請求制度と担保権者の権利
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 教授 山本 研
研究成果概要
本研究は、新破産法において新たに導入された担保権消滅請求制度につき、立法論および解釈論の両面から、検討を試みたものである。
 まず、前提となる理論的問題として、そもそも担保権消滅請求制度により担保権者の権利はどのような形で制約されることになるのかにつき、担保権の不可分性、換価時期選択権との関係、および、財団への組入金の性質と根拠についての検討を通じて考察を試みた。その結果、担保権の不可分性、換価時期選択権については一定の制約を課すことが認められるが、これに対し、優先弁済権、および、換価権については、その本質的な部分についてまでは制約することは許されず、担保権者が優先弁済権に基づき把握する競売換価価値については最低限保障する必要があり、また、対抗手段として担保権実行申立てを認めることにより、換価権自体は保障する必要があると解するに至った。
 また、担保権者による担保権の実行申立て(破187条)、および、買受の申出(破188条)を担保権者の権利に対する制約を正当化するための保護装置として位置付け、これらの制度につき検討を試みた。その結果、これら両制度については、倒産手続の局面において担保権者がその優先弁済権によって把握する価値をどのように捉えるかが、解釈論、さらには立法論としての制度の在り方にも大きな影響を及ぼすことが明らかになった。
 以上の検討を踏まえ、今後は、類似する他の制度(民法上の抵当権消滅請求制度、民事再生法および会社更生法における担保権消滅請求制度)や米国連邦倒産法における担保権の処遇等とも対比しつつ、さらに検討を深める必要がある。