表題番号:2009A-802 日付:2013/04/10
研究課題中国式民主化の論理と実践 -コーポラティズムの視点を中心に-
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 教授 唐 亮
研究成果概要
本研究は文献資料の収集・整理、現地での聞き取り調査を行い、分析を行った結果として、以下のような要旨を中心に中間報告書を取り纏めようとしている。第1に、欧米型民主政は普通選挙、複数政党制、表現の自由、権力のチェック・アンド・バランス、軍隊に対する文民統制および法による支配などを基本制度とするが、「中国式民主政」はあくまでも共産党の政治指導権を前提とし、国民の政治的権利と自由に対して引き続き様々な制限を設けている。他方、社会主義政治体制の維持を前提として、中国共産党は政治改革を行い、国民に対して政治的自由と権利の緩やかな拡大を認め、政策決定は民意の表出、集約、調整をいっそう重視し、政治運営は民主的な手法を取り入れようとしている。第2に、政治協商会議制度、全人代などの人事配置、政策決定過程における民主諸党派、大衆団体、社会団体などの参加からみると、中国の政治体制はコーポラティズム的な要素を強く持っている。中国のコーポラティズムは以下の特徴を有する。①欧米では、公共政策の過程に直接参加する団体は、労働組合と経営者団体であるが、中国では、民主諸党派、工商連合会、全国総工会、全国婦女連合会、青年団、文芸団体および数多くの業界団体はそれぞれ担当の立場から政策の協議に参加する。政策協議の範囲が比較的に広い。②欧米型のコーポラティズムは政治的多元主義の存在を前提とし、社会団体の自主性が高い。中国では、民主諸党派および関連団体などは必ず共産党の指導を受け入れなければなない。欧米型のコーポラティズムは社会コーポラティズムとするならば、中国のコーポラティズムは国家コーポラティズムである。第3に、中国共産党は引き続き政治的指導権を発揮しながら、政治改革の推進によって社会団体などの自主性を拡大し、民意を政治に反映させることである。それは決して欧米型民主政でないが、欧米型民主政の理念、制度、手法を部分的に取り入れることにはなる。したがって、中国共産党が主張している中国式民主政の建設は事実上、国家コーポラティズムの拡大と改善である。ただし、下からの民主化運動も存在している。それが目指しているところは、拡大版の国家コーポラティズムを特徴とする中国式民主政ではく、欧米型民主政である。