表題番号:2009A-605 日付:2011/04/11
研究課題様々な長さの架橋鎖を持つ面不斉ピリジンの高度立体制御
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 鹿又 宣弘
研究成果概要
(1) 異性化晶出法を用いる[14](2,5)ピリジノファンの面不斉立体制御
 長い炭素架橋鎖を有する[13]-および[14]-(2,5)ピリジノファンの様々な誘導体を合成し,異性化晶出に適合する化合物の探索とその効率的な面不斉立体制御について検討した.その結果,[13](2,5)ピリジノファンでは異性化晶出に適した化合物を確認できなかったが,架橋鎖が一炭素長い[14](2,5)ピリジノファン誘導体1で異性化晶出に適した化合物を見いだし,ピリジン環6位のメチル体,クロロ体,ブロモ体においては86-93% de で面不斉の立体制御が可能であることを明らかにした.また,特にブロモ体の異性化に関する速度論的な解析を行った結果,その面不斉は異性化晶出法が確立している[10](2,5)ピリジノファンとほぼ同程度の安定性を有していることが明らかとなった.さらにキラル補助基の除去が効率的に進行し,面不斉のみを有する (S)-2 の合成に成功した.

(2)面不斉テルピリジン触媒の不斉シクロプロパン化における遮蔽効果
 長い炭素架橋鎖を有する面不斉ピリジンが不斉反応の立体選択性に与える影響を明らかにする目的で,C14架橋鎖を持つ[14](2,5)ピリジノファン骨格を2箇所に組み込んだC2対称面不斉テルピリジン(Sp,Sp)-TPYの合成を行った.触媒としてCu(OTf)2 存在下,各種オレフィンとジアゾ化合物の不斉シクロプロパン化反応を行ったところ,最大でtrans-1が62%ee,cis-1が74%ee で得られた.相当するC10 架橋鎖型配位子では最大90%ee程度の選択性を示すことから,架橋鎖の自由度が向上することで遮蔽効果の低下を招き,立体選択性が低下したことが示唆される.これらの結果より,面不斉の不斉転写の選択性が遮蔽効果の影響を強く反映していることが明らかとなった.